SBT(Soul Bound Token/ソウルバウンドトークン)は直訳すると「魂に縛られたトークン」ですが、その意味するところは、誰にも受け渡すことができない「譲渡不可能なNFT」を指します。
SBTはNFTを大きく拡張するテクノロジーとして注目されており、2022年中には利用可能になるかもしれません。
現状ではNFTを含めトークンは全て譲渡可能です。
- SBTによって何がどう変わるのか?
- NFTやWeb3の世界にどんな影響を及ぼす?
- 我々の日常生活に変化はあるの?
この辺り、初心者の方にも理解しやすいよう、図解つきでわかりやすく解説していきます。
SBTは、今後大きなトレンドになっていくと考えられるため、NFTに興味を持つすべての方にとって要チェック事項です。
ちなみに、SBTはイーサリアム(Ethereum)創始者のひとり、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)さん達によってその構想が明かされており、本記事は2022年6月に発表された以下の論文を参考にしていますよ。
SBTの主な用途「証明」
SBTの主な用途として「証明」があります。
例えば…
- 個人の経歴・実績の証明
- 会議やイベントに参加した証明
- 賃貸契約の証明
- NFTの出所証明
などなど。
このような個人情報は「譲渡不可能」である方が好ましいですよね。
なぜなら、「譲渡可能」で他人の手に渡ってしまったら悪用されかないでしょう。
この辺り、もう少し深掘って解説していきます。
経歴や実績の証明
基本的にSBTは第三者から与えられます。
なぜなら、しかるべき第三者からの保証があるからこそ、証明として成り立つからです。
- スクールが発行した資格のSBT
- 大学が発行した卒業証書のSBT
- コミュニティが発行したイベント参加券のSBT
現状のWeb3ではそのようなものが無く、デジタル上で経歴や実績などを証明するのは困難です。
昨今、SNSで実績のアピールが当たり前に行われていますが、中には偽の情報を載せて詐欺を働こうとする人もいます。
しかし、SBTが普及すれば情報の真偽が確かめやすくなり、より健全な社会に向かうでしょう。
NFTの出所証明
ソウル(SBT用のウォレット)からはNFTを生み出すことができ、さらにそのNFTの出所証明としてSBTを発行できます。
つまり、本当にそのアーティスト自身のNFTかどうか、SBTによって判断が可能になるのです。
しかし、SBTが真贋(しんがん)検証としての役割を果たし、盗難の抑止になるでしょう。
「ソウル」はSBT専用のウォレットです。
様々なSBTを格納することで、ソウルは持ち主の個性を表すプロフィールになります。
SBTで拡張されるWeb3の世界
SBTで経歴や実績を証明できれば、様々な分野で活動の幅が大きく広がります。
- DeFiで無担保融資/ローンの利用が解禁されるかも
- DAOの投票時にシビルアタックなどの不正を防止できる
- より健全なエアドロップ「ソウルドロップ」が実現する
DeFiで無担保ローン解禁の可能性
SBTによって身分や経歴を示せれば、それが信用力の担保となり、DeFi(分散型金融機関)で無担保ローンが利用可能になるかもしれません。
DeFi(Decentralized Finance/分散型金融)とは、ブロックチェーン上に構築された金融システム。
わかりやすく言うと「仮想空間にある銀行」といったニュアンスです。
従来の銀行とは違って中央管理者が存在せず、無人で成り立っている革新的な金融ネットワークなのです。
現状は、信用力の代わりに多額の資金が必要になるため、無担保ローンなどを利用するのは非常にハードルが高い状況です。
つまり、今はWeb3でローンや融資を利用できるのはお金持ちだけになります。
すると、結局は「富める者がより富を得る」Web2的な(中央集権的な)構造を増長させてしまいますよね。
しかし、SBTの普及により、現時点で資金力がない人にもチャンスが生まれるでしょう。
そうやって個人が力をつけていけば、Web3的な社会(分散化社会)がより促進されていくと考えられます。
投票権としての活用(シビルアタック防止)
コミュニティの意思決定などで投票が行われる際、SBTを投票権として活用するケースが考えられます。
今でもNFTが投票権として利用されていますが、シビルアタックが横行しているのが現状です。
シビルアタックとは、1人または少人数がアカウントを大量に作って大勢にみせかけ、コミュニティを支配しようとする行為。
シビルアタックの原因のひとつは、誰でも複数のウォレットを簡単に作れてしまう点にあります。
しかしソウルの場合、1人で多人数を装うのは困難です。
なぜなら、保有するSBTにより、ソウルには個性が出ますからね。
仮に複数のソウルを作れたとしても、シビルアタックの疑いがないか厳しくチェックできます。
各ソウル間における「相関性スコア」を割り出し、談合・共謀・シビルアタックなどの疑いがあるソウルは除外、もしくは投票のウエイトを軽くしたりなどの対処ができます。
SBTによって不正は減少し、よりコミュニティの運営がしやすくなるでしょう。
ソウルドロップ
ソウルドロップとは、SBT及びソウルを利用したエアドロップです。
現状のエアドロップの仕組みはとても健全とは言えません。
アカウントをいくらでも作れてしまうため、一人で多数の参加枠を確保できてしまいますからね。
ソウル内のSBTを見れば、参加者がどのような人物かわかり、コミュニティに有益な人だけを選出できるのです。
例えば、コミュニティが過去に開催したイベントのSBTを持っている参加者がいれば「この人はうちを応援してくれている人だ!」ってわかりますよね。
逆に関連のあるSBTを持っていない人は、「ただの物欲しさで参加したんじゃないか?」なんて疑ってしまいますよね。
このように、ソウルによって支援者・非支援者が一目瞭然となるだけでなく、botやなりすましも検知でき、より良いコミュニティ作りに生かせるのです。
【Q&A】SBTに関する疑問あれこれ
SBTに関し、疑問に思った点をQ&A方式でまとめてみました。
- ソウルの秘密鍵を紛失したらどうなる?
-
現状のウォレットは、秘密鍵を失えば二度と発行できませんが、ソウルの秘密鍵は「ソーシャル・リカバリー」という仕組みで焼却や再発行が可能です。
ユーザーは信頼できる第三者(または組織など)を指定し「秘密鍵の変更権限を持つ人」として選出できます。
秘密鍵を無くしたとしても、その第三者によって救済してもらえるのです。
他者との繋がりを活用したWeb3的な仕組みと言えますね。
- SBTって誰にでも見られちゃうの?プライバシーはちゃんと守られる?
-
「ゼロ知識証明」などの暗号技術を用いれば、内容を隠したまま証明として使えます。
ゼロ知識証明とは「この証明は真実です!」という主張だけで証明として成り立つ暗号技術です。
それ以外の情報は一切公開する必要が無くなります。
SBTによっては、クレジット履歴、未払いローン、その他悪い評判に繋がりそうな情報など、知られたくない情報も出てくるでしょう。
そのような時には有用ですね。
まだゼロ知識証明がSBTに採用されるかどうかわかりませんが、論文内でも注目すべき技術として語られています。
【まとめ】SBTは分散型社会への大いなる一歩!
譲渡不可能なトークン・SBTについて解説してきました。
ブテリン氏は、DeSoc(Decentlized Society/分散型社会)を目指すべき社会のあり方だと述べています。
「分散型社会(DeSoc)」:魂とコミュニティがボトムアップで招集され、互いの創発的特性として、様々なスケールで複数のネットワーク財を生産する共同決定型の社会性です。
引用元:「Decentralized Society: Finding Web3’s Soul」DeepL翻訳
要するに、巨大な組織が一方的に世の中を導くトップダウン型社会ではなく、1人ひとりの強い個性が合わさって初めて大きな力を発揮するボトムアップ型社会を築こう!といったニュアンスです。
現状ではまだまだ分散型社会とは言い難く、GAFAに代表される中央集権的プラットフォームに誰もが依存している状況です。
NFTにしても…
- OpenSea
- Discord
このようなWeb2的プラットフォーム無くして活動はできません。
しかし、SBTによって個人の力が強化されれば、分散型社会へ向けて大きな一歩を踏み出せるはずです。
続報に注目し、Web2からWeb3への過渡期をしっかり見届けていきましょう!
ちなみに、当サイト管理運営であるtochiさんも、ご自身のメディアでSBTの発信をされています。
併せて参考にすればより理解が深まりますよ。